北限のマングローブ物語 

書出し

この物語はほんとうにおきていることです。

 1994年1月10日のある新聞に「マングローブの力」というコラムがのりました。
それは新田さんという人が書いた、次のような記事でした。「マングローブ林には枯れ葉などがエサになって貝やエビ、カニが集まり、潮が満ちてくると魚も寄ってくる。
タイではエビの養殖場をつくるのにマングローブ林をつぶしてきた。けれど、今タイの人々はマングローブ林の大切さを見直して、苗センターをつくりマングローブの植林を始めている。
マングローブというのは一種類の木ではなくて熱帯、亜熱帯の海岸にはえる塩分にもつよい木達のことを言う。
日本では鹿児島県が北限ということになっているけれど、実は三十年ほど前に伊豆に移植され立派に育ったという話を聞きました。開発によって伊豆のマングローブ林が伐採されてしまったか、それともいまだに茂っているかを確認したい。」
それをよんで高校生だった青年は手紙を書きました。
「そのマングローブ林は、ボクの家の近くにあります。中学生の時、夏休みに研究発表したことも思い出し、嬉しくなりました。北限のマングローブは元気です。」
と。



その手紙は偶然、その記事を書いた人たちが集まる研究会が行われた日に届きました。
参加した人達は全員びっくり。
そして嬉しくなってバンザイをし、南伊豆へみんなで行くことに決めました。
こうして東京と南伊豆、マングローブがとりもった縁がはじまったのです。



しかし現実は厳しかったのです。
三回もの大水害の教訓から護岸工事が行われていて、そのマングローブ林の所だけが最後に残っていました‥‥



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