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「日・タイ友好マングローブ植林2000」ニュースレター No.3

プアン・カン(友達同士) プアン・カン
(友達同士)
発行日: 平成12年11月20日
発行者: 服部達雄
(タイマングローブ植林実行委員会・委員長)
編集者: 池上恵理・井川良子・三枝信子(同・編集委員会)
Web版作成: 竹村登

 コップンカー(クラップ)!! いよいよマングローブ植林も間近に迫ってきました。
 皆さん、心の準備はいかがですか? 今回のニュースレターは、我が実行委員長らが現地調査に行った植林サイトのレポートがぎっしりつまっていて、見所満載です!
 また、今回は、SDGF研究会の生みの親のおひとりでもある小林先生に素晴らしい文章を書いて頂きました。小林先生は、前回のニュースレターでご執筆頂いたSDGF会長の新田先生と加藤先生との出会いをつくられた方で、私たちのタイ・マングローブ植林活動の第一提唱者であります。以下、ご紹介します。

日本の戦略としての東南アジアにおけるマングローブ植林
創価大学・工学部長、同・生物工学科・教授 小林 登史夫

 現在の日本は物質的に大変満ち足りた状態を維持しており、昭和20年前後の窮乏期を知る者にとっては、天国の様に感じているものの、この天国しか知らない若い方々にはこれが当たり前と取られているようだ。3日食べなければ、暴動状態に陥ってしまう食料の供給に関しても、日本の穀物自給率は、先進国の中で郡を抜いて低位に位置しており、既に30%を割っているにも関わらず、残飯の量は、30%を越えているとの推定もある。
 一方、1999年の秋に地球全体の人口が60億人を突破し、国連の中位推計でも20年後には80億人を越すとされている。一度使えば糞尿にしかならない食糧資源を生産する世界の耕地は、新規に開墾する余地が無いばかりでなく、逆に、真水欠乏、塩類集積、表土の流失、などの原因で年々減っている状況にある。バイテクによる増産も期待できるが、近年騒いでいる拒否運動が収まったとしても、種苗、肥料、農薬、機械化、・・など周辺技術と連動する必然性から、世界全体では高々20%程度の増産しか見込めないという。
 さらに恐ろしい要素は、人為的な投機であって、部分的な異常気象などを引き金にして、世界を席巻する買い占めが起きると、瞬時にして流通量が激減し価格も暴騰すると予想されているが、自由主義経済の下では、この行為を止める手だては無い。唯一期待できる方法は、穀物等への一斉投機が利益には繋がらない安全弁的な技術システムを、あらかじめ形成させておく事だけである。
 炭酸ガスの固定や地球温暖化対策としてのマングローブの機能もあろうが、21世紀の前半には予想される食料危機への具体的な対策としてのマングローブの役割りにも、注目する必要がある。それは、植物のエネルギー貯蔵器官である"澱粉"を大量に備蓄して、食料危機に際してショックアブソーバー的な役割を担わせれば、大規模な投機は防げる。多量の澱粉は何処で安価に生産するかといえば、マングローブで広げられた森林域の内陸側に"サゴ椰子"の大規模圃場を造り、ここで生産させる。周知の如く、サゴ椰子は塩類濃度1%程度までの耐性があり、4年に1度は多量の澱粉が簡単に収穫できる。光合成機能の旺盛な東南アジアでは、島嶼部も多く、その間隙が圃場の候補地になろう。
 既存の耕地は住民の食料生産に供し、それと競合しない形態で大規模なサゴ椰子圃場を造る。この技術システムこそ、食料自給率が際立って低い日本が、世界に率先して緊急に手がける事が望まれている。世界のため、現地のため、そして日本のためにも、こうした新しい技術システムの形成を加速する必要がある。

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