プアン・カン−日・タイ友好マングローブ植林2001 ニュースレター | No.2 |
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「日・タイ友好マングローブ植林 2001」参加ボランティアの募集を開始します。今年は、ツアー 日程が11月23日(勤労感謝の日)からの3連休と重なりますので、多数の参加希望が予想さ れます。できるだけ早めに申込み手続きをしてください。 |
インドから西へ世界を一周した(?)マングローブ |
小林登史夫(実行委員) (創価大学工学部教授) (SDGF研究会メンバー) |
日本やタイなど、我々が植林の対象にしているマングローブは、どういう歴史のもとに今の様な姿で、そこに生育しているのだろうか? もう10数年も前になるだろうか、面白い文献を見つけたことを思い出したので、ここに紹介してみたい。 原文はChapman1)と言う人が書いた様だが、その原本を直接読んだ訳ではなく、要約された資料を"熱帯農業技術叢書2)"の中から見つけて、その気宇の壮大さから良く憶えていたというに過ぎない。いわゆる"孫引き"であることをお断りしておく。 Chapmanは"大陸移動説"を基にして推論したものだが、まずその"大陸移動説3)"なるものを説明しよう。今から2億年ほど前の古生代・二畳紀には、地球上の陸地は1カ所にまとまって居たと考えられており、その極めて大きな大陸(超大陸)の名前を「パンゲア」と今では呼んでいる。この超大陸が、地球深部のマントルや中心核の変化などの影響で、幾つかに割れて移動した結果、現在の様な大陸の配置ができたとされている。どうしてそんな大昔のことが判ったのかと言えば、この説を1912年に発表したA.L.Wegenerは、大西洋を挟んだアフリカと南アメリカの海岸線の形が似ていること、両大陸で発見される化石の共通性、また、大陸氷河の分布状況などを根拠にしている。一方でA. Du Toitは、1っだけにまとまった超大陸ではなく、間にテチス海を挟んで北半球にローラシア大陸、南半球にゴンドワナ大陸が有ったと考えた。これらの説は大陸が移動した原動力が不明であったために、1930年代末には一度否定されたものの、1950年代になってから岩石が記録している地質時代の地磁気極や方向(伏角)を調べる古地磁気学の観測結果から、"大陸移動説"は再度日の目を見ることになった。古地磁気学的に見ると、もし大陸移動が無かったと考えるならば、現在の状況が説明できないことが判ったのである。そして大西洋、太平洋の海洋底が少しずつ拡大している"海洋底拡大説"や、地震が起きる原因として"プレートテクトニックス"という海洋底が日本などの陸地の下に沈み込む現象を説明する基礎としても、今では使われている。 伊豆半島は大昔にはフィリッピン沖に有ったものが、ゆっくりと北に移動して日本列島の横っ腹にぶつかり、そこを強く押したために地殻に異常が生じて富士山ができた、という話を聞いた時には、"国引き"の神話にも信憑性があったことを知らされた。 さて肝心のマングローブに話を戻すと、7,500年ほど前、白亜紀〜新生代の始めに被子植物の多様化が進んでマングローブのはるか昔の原種が、塩分環境に適応した進化を始めたと予測される。だいぶ時代は近づいて約1,000万年前におけるインドからヨーロッパ、アメリカの状況を図1に示す。現在では、インドとネパールが接する「ヒンドスタン平原」(図中の"M")の辺りが、その原種が生育していた場所であって、ガンジス川がこの平原の中央を流れ、西のはずれにインドの首都デリーがある。三角形をしたデカン高原は、まだだいぶ沖合に離れており、今のヨーロッパとアフリカの間にあったテチス海は、ペルシャ湾からユーフラテス川をさかのぼる様に地中海まで抜けて居たことになる。同じように、南北アメリカも間が大きく離れていて、今の大西洋と太平洋は完全に繋がっていたようだし、今の大西洋も分離した直後で東西の幅も狭く、スペインから北米まで、アフリカから南米までの距離も、今の数分の1と考えられる。 地球の自転の影響で、赤道に近い低緯度地域(Mは北緯20度)の海流は主に東から西に流れるから、この海流に乗って図中の矢印で示されるごとく、マングローブは流され拡散して行ったと想像される。その後、陸地の衝突による海流の遮断、気象の変動などがあって、現在では地中海地域と北東アメリカ地域のマングローブは、消滅してしまったのであろう。南北アメリカの西側(太平洋岸)に達したマングローブが、はるか太平洋を横断したと考えるには、距離の関係から勇気の要る推論であり、現在ハワイに生育しているマングローブは、人が導入したものとされている。したがって、沖縄なども含む東南アジアに自生しているマングローブは、主にインド周辺から東向きの季節風に流され、渦を巻く海流に巧く乗って西向きの主海流逆らって、さらには、パナマや南アメリカ西岸から島づたいに太平洋を横断して、現在の場所に到達した様である。学会でもまだ公認されてはいないが、各大陸が海を遮断してしまう前に太平洋に達していたマングローブが、地球を一回りしたと考えると、我々のロマンはもっと広がることになろう。 [文 献] 1) Chapman, V.J., ed.,Wet Coastal Ecosystems, Ecosystems of the World, 1., Amsterdam; Elsevier, p428, (1977) 2)「東南アジアの低湿地」、熱帯農業技術叢書20号、農林水産省熱帯農業研究センター(現在・国際農 林水産業研究センター[JIRCAS])編、p111〜 、 (1986 - Mar.) 3)A.L.Wegener,都城秋穂ら訳『大陸と海洋の起源(上),(下)』、岩波書店(1981) |
1,000万年前のインド洋とテチス海 Mはマングローブの起源地、矢印はマングローブの分布方向を示す。[Chapman, 1977] (農林水産省熱帯農業研究センター「東南アジアの低湿地」p112 より) |
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