熱帯地域海岸線の4分の1を占めているマングローブ林は、現在、地球上では約1,800万haが存在しているが、フィリピンではすでに原生マングローブ林の70%以上が失われ、タイ国でも、1961年にはほぼ沿岸全域に約367,900ha分布していたマングローブ林の面積が、1993年には約168,000haまで減少してしまった。マングローブ林がこの30年間で半減(約55%減少)してしまった原因としては、エビ養殖場への転換、エネルギー源(薪炭材)、建築材、住宅地への開発、工場用地への開発、スズ採掘などが挙げられる。 また、世界の漁獲量は生産の限界に迫っているとされ、養殖などの新たな漁業資源の確保が必要とされているが、養殖には、養殖池造成に伴うマングローブ林の伐採や水質汚濁などの多くの環境破壊問題が指摘されている。特にアジアでは、養殖(エビ、魚類)の発展がマングローブ林の最大の原因とされている。実際にタイ国では、養殖のエビの収穫量増大とともに、マングローブ林が減少してきた。(ちなみに、1990年代初頭には総収穫量が約23万トンに達したタイ国のエビ養殖は、その後1997年には約12万トンに半減したが、日本へは変わらず約8万トンが輸出され続けている。)計画的な生産量が確保できなくなった養殖池を順次放棄・放置し、新たにマングローブ林を伐採して養殖池の建設を進めてきた結果、シャム湾海岸線のマングローブ林は、ほとんど消滅したのである。養殖業者は土地使用権を維持することだけが目的で放置を続けている。 だが、マングローブ林減少の最大の原因は、伐採後の植林がまったく行なわれなかったことではないだろうか。1992年にブラジルで開催された「地球環境サミット」後、タイ国では環境改善への取り組みが始まった。特にタイ全土の森林を管理しているRED(王室森林局)は、マングローブ苗育成センターとマングローブ環境保全保護研究センターを設置し、マングローブ啓蒙に取り組み、全国的植林への準備を整えた。
パンガ県、プーケット県での植林実績は100万本を超え、日本からの参加者はのべ約600名、地元参加者は中高生や青年層を中心に9,000名を超えている。植林100万本の約50%が共同植林であるが、その半分は友好植林を通して地域に結成されたマングローブ植林組織の自主的植林であり、友好マングローブ植林の大きな成果といえる。第1回植林のオオバヒルギの成長は目覚ましく、すでに4mを超え、多数の支持根を張り出し種を実らせ始めている。 * この文は「日本マクロエンジニアリング学会誌・MACRO REVIEW Vol.13」掲載の「マングローブ植林と日本企業の貢献/加藤茂」を参考に再構成させて頂いたものです 文責・三枝信子(協力・林 豊) |
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